2014年8月26日火曜日

NHK「お金と感情と意思決定の白熱教室」(ダン・アリエリー)を見て

TEDでお馴染みのダン・アリエリーがNHKで「お金と感情と意思決定の白熱教室」を行っていた。
勿論内容は行動経済学の解説。とても面白かった。

==== 第1回 人間は“不合理”な存在である! ====
やっぱり行動経済学は面白い。

人間の「怠惰」を甘く見てはいけない。想像以上に面倒を避ける傾向がある。
デフォルトが決まっていると楽だからそれに引っ張られる。

直感的に正しいことが何時も正しいとは限らない。
多くの人が同じような直感的な間違いをする事もある。
例えば錯覚などで、その直感が正しくないと認識していても、脳はやはり間違った認識を正せない場合もある。

目標や目的などの大きな事よりも目の前の小さな環境の変化に行動は左右される。
小さな変化で良い行動へ導ける可能性がある。
gamificationで目標な目的などの意味のあることの達成のために、バッジの獲得などのあまり意味のない事を経由するのにも通じる考え。

内容の殆どはTEDでのプレゼンの内容と被ってはいたが、改め聞いても面白かった。

また、うちの子供たち等を見ていると、人は不合理と言うのは納得できる。

==== 第2回 あなたが“人に流される”理由(わけ) ====
特に合理的な理由がなくても思わず人に同調してしまう事がある。
これも直感に頼った不合理な行動の一つ。
勿論正しい無難な行動である場合も多いが、何時も正しいとは限らない。
より狭く、より属したいと望んでいる集団に同調しようとする。
「ソーシャル・プルーフ(社会的証明)」=>「みんながやっている事なので正しいはず」という考え方。

相互主義=>「自分もこうするからあなたもこうして下さい」というメッセージ。
自分が先に行動して相手に行動を促す方が効果的。
「Thanks in advance」も「先にお礼を言っておくのでお礼に見合った事をしくれ」と言う一種の相互主義といえるかも。

群集行動。同調の影響で個人が普通では取らない行動を集団では取ってしまう危険性がある。
イジメや暴動もこの一種と考えれる。
意思決定はおかれている環境の影響を多分に受ける。
社会的規範が明確でない場合は、一人が悪い行動をすると、それが許容される行動とみなされて、さらに過激な行動になっていく場合がある。

見られていないと規範に従わない傾向がある。モラルハザード。
ネットの匿名性。

一人の規律違反が集団全体に悪影響を与える。守らないことが許容されるという事が社会規範と見なされてしまう。
断固に容赦なく対処する必要がある。

同調を利用して人に良い行動を取るよう導ける可能性がある。
gamificationのsocial power

==== 第3回 デート必勝法 教えます !? ~人々の感情をどう動かすか~ ====
感情は人類共通の言語。世界中の誰にでも同じ様に当てはまる。
進化の古い段階で獲得されていて、人間以外の動物にとも共通している。

感情は緊急時に考えなくても行動するための非常装置。
これは原始時代には特に有用だったと考えられるが、直接的な生命の危機に直面する事が少ない現代人にとっては合理的な判断を狂わせる要因になってしまうことが多々ある。

感情は予測したりコントロールするのは難しい。
感情は置かれている環境の影響を受けやすい。環境を変えれば感情も変わる。
頭では理解していても感情は抑えられない場合がある。
感情は長続きしない。

客観的な認識とは両立しない。
感情について客観的に認識して、その感情に何らかの理由を見つけてしまうと感情のスイッチがオフになる。

理性よりも感情に突き動かされている。
感情に上手く訴えかければ強い動機づけになる。
抑えることが重要な場面もあるが、上手く動機に結びつけることも重要。

問題が大きくなるほど感情的には無関心になってしまう。
統計的な話になると想像が難しくて感情スイッチが切れてしまう。
生き生きと想像出来ることが重要。

感情の発端の誤認。
楽しいから笑うのか、笑うから楽しいのか。
感情の発端を把握するのは思っているより難しい。
後付けで理解しやすい理由を付けている場合も多い。
発端の誤認を上手く使って動機づけすることも出来る。

自分は本質的には平均的な人よりも感情の起伏が激しいのかもしれないと思った。
感情の起伏が激しいことから来る問題が発生する事が多かったために、自然と感情を抑えるすべが身に付いた?
感情の発生に理由を付けることで不安が減少するので、感情が発生すると直ぐに何らかの理由を探して感情のスイッチを切るようになってしまった?
今でももちろん感情的な行動をする事はあるが、その後は強い自己嫌悪感がある。これも感情だが。
感情的になって自己コントロールが効かない状況への不安から、感情を上手く使って自分を動機付けることが出来ていない?
感情的であることを無理に抑えているので、感情的な振る舞えを見ると嫌悪感が湧く?(shadow)
最近は嫌悪感が湧いてもそれは自分のshadowを見ているからだと認識して嫌悪感すら抑制している気もする。

子供たちは当然感情の赴くままに生きているが、今後どう感情と付き合って行くかは親の行動の影響を多分に受ける気がする。
上手く感情と付き合って行けるように何か出来ることはあるのだろうか。。。

==== 第4回 ダイエット成功への道!~自分をコントロールする方法とは~ ====
今回は自己コントロールについて。
結局原則にあるのは、人は大きな有意義な目標よりも、目先の小さな欲求、誘惑によって動かされているという事。
大きな目標の達成を目先の欲求と結び付けたり、欲求に捕らわれる前に欲求の影響を受けにくくする状況を作るなどの手がある。

[双曲割引]
人は将来の大きな利益よりも、目の前の小さな利益の方を優先させてしまう傾向がある。
人は現在に生きていて、将来は現在には勝てない。

これは人間がまだ動物だった時から備わっている本能的な所から来ていると思われる。
動物にとっては一寸先は闇で、将来はコントロール出来ないとても危ういもの。
少し先の将来でも自分が生きているかどうか分からないので、将来の利益を当てにするより今の利益を確定させた方が有利。

人間にとって将来は動物比べれば随分不確実さが減っているはずだが、直感は将来を過剰に不確実に感じさせてしまう。
これが色々な局面で不合理な行動を取らせてしまう元凶に思える。

双曲割引とは、同じ利益であっても遠い未来であればあるほど価値は割り引かれて低下するが、現在から近い将来の間は割引率が高く、遠い将来では割引率が小さくなっていくと言う性質を表している。

例えば1年後に10,000円もらえるのと、1年と1週間後に11,000円もらえるのでは、後者を選択する人でも、一年経過して今日10,000円もらえるのと、1週間後に11,000円もらえる状況になった際には、過去の選択と矛盾して今日の10,000円選択する傾向にある。
この傾向は双曲割引で近い将来と遠い将来の割引率が同じでないことに起因していると捉えることが出来る。

[代替報酬]
遠い将来の大きな報酬を得るための行動をさせるためには、その行動を行った時点で何らかの小さな報酬を与えられるようにすると良い。
この小さな報酬自体は将来の大きな報酬と直接関係している必要はない。
これを代替報酬と言う。
よくある例がテストで良い点を取った時のご褒美である。
gamificationも代替報酬を効率的に活用する方法でり、今回の話の中でも触れられていた。

[損失回避]
同じ価値の代替報酬でもより動機付けに作用するようにするためには「後悔」を利用する方法もある。
人は損失回避から報酬を得られる喜びよりも失った悲しみの方をより強く感じる傾向がある。
あらかじめ報酬を前払いしておいて、行動が実施されなかったら没収すると言うのは効果的な方法。

[報酬の新鮮さ]
同じ報酬を何時も受けていると慣れてしまって最初よりも報酬の価値を低く感じる傾向がある。
これを防ぐには報酬には不確実性があった方が良いという事になる。
例えば毎回100円の報酬があるよりも。50円、100円、150円をくじ引きでランダムに与えた方が動機付けになりやすい。

これを損失回避とも組み合わせて、行動が実施されず報酬が与えられない日でもくじだけは引いて、「もし行動していればこれだけもらえたのに勿体ない」と伝えることで後悔の念を引き起こすことも出来るので、更に効果が高まる可能性がある。

[コミットメントデバイス]
目の前の誘惑には簡単に負けてしまうが、ある程度先の誘惑に対しては冷静な判断をすることが出来る。
したがって、将来の誘惑に対して冷静な判断が出来る時点で、将来誘惑が近づいても誘惑に負けないよな手を事前に打てれば有効である。
これが有名なオデュッセウスとセイレーンの逸話にあるように、自分が誘惑に負けた行動が出来ないように冷静な時に手を縛っておくという事になる。
この未来に対して制約を掛ける仕組みをコミットメントデバイスと言ったりする。
人前で行動を宣言して後には引けないようにすると言うのもコミットメントデバイスの典型的な例。

==== 第5回 “お金”の不思議な物語 ====
[ほかのジャンルのモノと比較するのは難しい]
お金を使う時にも本来は機会費用を考えた方が良い。
日本で新車を買いに来た人たちに「新車を買う事で何を諦めたか(機会費用)」を聞いた。
答えの多くは「他の新車を買えなくなった」
これはモノの価値を考える際に、ほかのジャンルのモノとの比較の難しさを表している。
今自転車を買うのとその分を老後の資金として取って置くのとの比較はとても困難。

[お金の相対性]
お金を絶対額ではなくて比率で判断してしまう傾向がある。
100円のモノが110円なら高くて買わないが、1万円のモノが1万10円でもあまり気にならない。
大きな買い物をするときには相対的に誤差と思える金額も大きくなってしまう。
これは特に家を買う時や車を買う時などに顕著。

[支払いの苦痛]
消費のタイミングと支払いのタイミング一致すると支払いの苦痛は大きくなる。
クレジットカードや電子マネーは支払っている気がしないので、支払いの苦痛は小さい。
自動引き落としも同様に支払いの苦痛が小さい。
支払いの苦痛が小さいと無駄遣いしやすくなってしまう。
消費と支払いが直径するような工夫をすれば支払いの苦痛が大きくなり無駄遣いを防げる。
バーで飲むときに一杯づつ、もしくは一口づつ? 現金で会計する。
冷暖房をコインを入れたら一定時間動くようにする。
車の走行メータや燃料計を金額表示にする。

[心の会計]
使い道に応じて心の中で予算枠を決めて使う事。
予算枠の変更をしたくない、もしくはする必要がないと言う心理が働く。
毎月定額で預金をしている場合、それ以上にお金が余っても預金せずに使って良い気分になる。
ポイント還元されると、それはあぶく銭で他のお金と違って無駄に使っても良い気分になる。

[無料の魔力]
0円と10円、10円と20円では同じ10円差だが0円は特別に感じる。
0円であると質が劣るものでも過剰にはびこってしまう。
そうすると他者も0円に値下げする必要が出てしまい市場が崩壊する。(底辺の競争)

[アンカーリング]
一旦基準にする金額が定まると、そこからの高低により割高、割安が判断される。
メーカー標準価格や過去の価格など。
一旦無料でアンカーリングされてしまうと、無料以外はすべて割高に感じて敬遠されてしまう。
ネット上のサービスやアプリなど。

==== 第6回 私たちは何のために働くのか? ~仕事のモチベーションを高める方法~ ====
[努力と成果]
成果に対する報酬の基準が無い場合は、労力に対して報酬が支払われる場合が多い。
簡単に出来たことには低い報酬、中々出来なかった事には高い報酬。
スキルが同じ場合は問題ないが、高スキルのために労力が少なかった場合でもスキルは過小評価されやすい。

[アンダーマイニング]
内発的動機で行動しているところに外発的動機が加わると、内発的動機を弱めてしまう事。

[認知と無視とシュレッダー]
行った成果の認知するだけでもモチベーションは向上する。
成果を無理するのはシュレッダーに入れるのと同様にモチベーションを低下させる。

[オーナーシップ、愛着]
自分の所有物になると価値が高いと感じる。

[手間をかけると価値が上がる]
自分が手間暇かけて作成したものは、他人が作成したものより価値が高いと感じる。

[自社開発主義]
自分のアイデア他人のアイデアよりも価値が高いと感じる。

[やりがい]
産業革命は肉体労働の時代でアダムスミス的な分業と効率化が重要だった。
現代は知的労働の時代でマルクス的なやりがいが重要になっている。

==== 全体を通して ====
行動経済学の面白さが伝わる良い番組だった。
直感に従っては適切に行動できないケースを知ることや、すくなコストで自分や他人や組織により良い行動を動機付ける手法として、ますます行動経済学やゲーミフィケーションが重要になっていくと感じた。

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